simple polytopeの組合せ構造の復元

多面体の組合せ論にずっとうっすら興味を持っていたのですが、なかなか重い腰が上がらず何も進んでいませんでした。今週思い立ってある論文を読もうとしましたが、読み始めたのが平日でその日は読みきれず、日を跨いだらNotationを忘れてしまい、結局絶賛放置中です。仕方ないので別のものに手を出すも、そちらも議論に振り落とされてしまい、もう自分には論文読めないのかと思っていた矢先に、めちゃくちゃ短いKalaiの論文が読めたのでそれの紹介です。

 

 

Pd次元凸多面体とする.G(P)=(V(P),E(P))P1-skeltonのなすグラフとする.

 

G(P)から元のPの組合せ構造を復元できるか(すなわちPの面を全て列挙できるか)?

 

答えは実は一般にはNoである(後述するかも?).Kalaiは以下の論文でPがsimple(すなわちG(P)d-正則)なときにYesであることを示した.

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/0097316588900647

これを紹介する.そもそもの発想と,途中でMorse関数のようなものを考えることが面白い.

 

証明の中身

まず,simple polytopeに関していくつか基本的な注意をしておく.

  • Pがsimpleなとき,Pの任意の面もsimpleである.実際Pのfacetを考えると,少なくとも一本以上の辺がその支持超平面上にはなく, d-1次元多面体の頂点の次数はd-1以上であるためfacetについては成り立つ.これを繰り返し使うことで任意の次元の面についても言える.
  • またsimple polytopeのある頂点をvvに接続する辺全体の集合をAとする.任意の部分集合B \subseteq Aについて,vを含みかつAとの交わりがちょうどBであるような面がちょうど一つ存在する.存在についてはv周りの各超平面はAのうちある辺だけを含まないものとなっているので,Bに対応する超平面の交わりを取ると言える.一意性については,存在するのであれば上記のことから次元は\text{deg} v= |B|と等しいのでそれから従う.

 

G(P)の辺の向きづけOで,有向サイクルを含まないようなもの(acyclic orientation)を考える.acyclic orientation Oがgoodとは,Pの任意の面Fについて,Oを誘導部分グラフG[F]に制限したものにsink(出次数0の頂点)が一つしか存在しないこととする.genericな方向の一次関数を考えることで,good acyclic orientationは常に存在することに注意しておく.

まずは与えられたacyclic orientationがgoodかどうかを,G(P)のみから判定する方法を述べる.

 

acyclic orientation  Oについて,h_kを入次数kの頂点数とし,f_O :=  \sum_{k=0}^{k=d} 2^k h_kとする.f_Oは考える理由は次である.

P空集合を除く全ての次元の面の数の総和をfとする.acyclic orientation Oを固定する.面Fと,向きづけOFに制限した際のsink v \in Fの組(F,v)の総数を数えたいとする.vの入次数がkだとすると,注意の通りvに入ってくる辺の任意の部分集合に対応する 2^k個の面がとってこれる.よってそのような組(F,v)の総数はちょうどf_Oに等しい.どの面にもsinkは存在するのでこれはf以上.一方定義より,Oがgoodならf=f_Oが成立する.

 

したがって,全てのacyclic orientationを考え,f_Oの最小値に一致するかどうかでgoodかどうかを判定できる.これが重要である.

 

よって次を示せば十分.

主張

A \subset V(P)k-次元面をなすことは,誘導部分グラフG[A]が連結なk-正則グラフで,かつあるgood acyclic orientation(から誘導される半順序)のlower setになることと同値.

証明

k次元面の1-skeltonがk-正則なのは既に述べた.またk次元面が与えられたとき,そのnormal vectorをgenericな方向に少し回転させた方向を見ると,所望の向きづけが手に入る.

逆に後半が成立しているとする.G[A]の唯一のsinkをvとする.vに向かうk本の辺を全て含む面Fが存在する.good orientationなので,半順序においてFの要素は全てv以下.よって,F \subset G[A]であるが、ともに連結でk-正則なので,これらは一致する.

 

 

コメント

  • simpleでない場合の反例としては複数のneighborly polytopeなどが挙げられるそうです。(まだ理解していません)
  • 以下に色々情報源がありそうです。

pantodon.jp

link.springer.com