互いに接するd-単体の最大値

はじめての投稿です。問題から始まる記事を書こうと思います。

 

問題

 d次元単体が \mathbb{R}^dの中にk個ある.どの二つも内部を共有せず,境界も含めるとどの二つも d-1次元の交わりを持つ. kとしてあり得る最大値 f(d)はいくらか.

 

 d=2の時を考える. 4つの三角形を条件を満たすように配置することはできる.一方, 5つの三角形が条件を満たすように配置できるとすると,その双対グラフが K_5の平面的な埋め込みになってしまう.したがって f(2)=4である.

 

以下が知られている.証明もとても初等的である.

 

定理 [Perles 84]

 f(d) \leq 2^{d+1}

 

証明

上の性質を満たすk個の単体 P_1, \ldots, P_kがあるとする.いずれかの単体のfacetを含む超平面を列挙したものが H_1, \ldots, H_sだとする. H_iの定める閉半空間を H_i^+, H_i^-とする(好きなように向きを決めていい).

これをもとに k \times s行列 Mを次で定める.

  • 超平面 H_j P_iのfacetを含み,かつ P_i H_j^+に含まれるとき,  M_{ij} = 1
  • 超平面 H_j P_iのfacetを含み,かつ P_i H_j^-に含まれるとき,  M_{ij}= -1
  • そうでないとき M_{ij}=0

この時次が成り立っている.

  • どの行も非ゼロ成分の数はfacetの数に等しく, d+1個.
  • どの二つの行についても,一方で 1,もう一方で -1となっている列がある(対応する単体を分けている超平面があるため).

このMから巨大な行列 Bを次のように作る.

  • 各行ベクトルについて,現れる 0 1 -1で置き換えて得られるものを全て列挙して並べる.
  • それらを全て並べる.

すると,上の1つ目の性質より Bのサイズは k2^{s-d-1} \times sとなる.さらに上の2つ目の性質から Bの全ての行ベクトルは異なることがわかる.よって, ks^{s-d-1} \leq  2^sとなり,定理がしたがう.

以上

 

 

コメント

  •  f(d) \geq 2^dも示されています.これも面白いのでいつか紹介します.
  •  f(d)=2^dかは未解決のようです.つまり冒頭の問題は未解決問題のようです.

参考文献

Touching Simplices and Polytopes: Perles’ argument | Combinatorics and more

Touching simplices | SpringerLink